期限の利益(きげんのりえき)とは「借金の分割払い」が認められることです。お金を借りるとき、期限の利益がなければ一括払いしなければなりません。期限の利益が設定されているからこそ、住宅ローンを組んだときに毎月一定額などの分割払いができるのです。
住宅ローンなどの「返済期限」を定めるとき、具体的にいつまでに支払うかについては借主と貸主との協議により、自由に決定できます。一括払いにするのも分割払いにするのも自由です。住宅ローンなどの高額な借入の場合、通常一括では返済できないので借主が返済可能な条件を定めて「期限の利益」を設定し、銀行が借主に分割払いを認めます。
期限の利益(分割払い)の設定方法には、法律上の決まりはありません。 毎月一定額払いでも2か月に1回の支払いでもかまいませんし、返済期間を何年に設定するのも自由です。住宅ローンの場合には、最長で35年として借主の都合に応じて返済期間を設定し、毎月一定額払いにするのが通常です。夏冬などのボーナス月には支払い額を加算する「ボーナス払い」を設定する場合もあります。
3,000万円の住宅ローンを借り入れて35年間の分割払い(期限の利益)とし、借主が銀行へ月々71,428円(プラス金利)ずつ支払う
3,000万円の住宅ローンを借り入れて15年間の分割払い(期限の利益)とし、借主が銀行へ毎月166,666円(プラス金利)ずつ支払う
期限の利益を設定すると分割払いできるので、借主にはローン返済をしやすくなるメリットがあります。 ただしローンを分割で支払うと、返済期間中に「利息」がかかり続けるので注意が必要です。住宅ローンには変動金利制と固定金利制があり金融機関や借入時期によっても「利率」が異なりますが、所定の利息が発生し続けるので一括払いより支払い額は多くなります。 ローンの利率が高ければ高いほど完済までの利息の金額が高額になり、負担が大きくなります。 支払い利息額を減らしたければ、できるだけ「繰り上げ返済」を行って早期に住宅ローンの返済を終えるべきです。
ただし住宅ローンには借り入れ後10~13年間の「住宅ローン控除」が認められるので、その間は繰り上げ返済を行わず税制上のメリットを受ける選択も可能です。 また支払い利息額を減らすには、利率の低い住宅ローンに借り換える方法もあります。
住宅ローンでは、期限の利益を「延長」してもらえるケースがあります。いわゆる「リスケジュール」です。 リスケジュールとは、住宅ローン返済が厳しくなったときに金融機関と協議して一定期間「利息のみの支払い」などにしてもらうことです。返済額を減らしてもらえるのは通常1年程度で、それが終わったらまた通常通りの返済に戻ります。 リスケジュールをすると、返済を猶予された分返済期間が延びます。ただし全体として支払期間を35年以内におさめなければならないのが通常です。
たとえば20年ローンを組んでいる人が銀行と協議をしてリスケジュールを行い1年間元本の支払いを猶予してもらうことにより、合計で21年にわたる返済期間(期限の利益)を認めてもらえたりします。
住宅ローン返済で期限の利益を設定する場合、もう1つ注意点があります。 それは、期限の利益が失われるリスクです。 住宅ローン契約には「借主が住宅ローンの返済を長期にわたって滞納していると、期限の利益を喪失する」という約款が含まれています。借主が期限の利益に甘えていつまでも住宅ローンを返済しなければ、金融機関が不利益を受けてしまうからです。期限の利益を喪失したら、借主はそのときの残ローンを一括払いしなければなりません。(期限の利益喪失とは参照)
通常は住宅ローンの滞納期間が半年程度になると、借主は「期限の利益を喪失する」と定められています。請求通りに残ローンを支払えなければ、代位弁済を行った保証会社が競売を申し立てるので家が失われてしまいます。
住宅ローンを利用するときには期限の利益の設定によって返済が容易になりますが、滞納を続けるとその利益も失われます。くれぐれも返済遅れが生じないように、収入や支出の状況と照らし合わせて計画的にローンを設定しましょう。
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